シルバーシートの憂鬱【物の気持ちシリーズ】

大げさに云うと、あったかい羊毛の毛布みたいな存在だって思ってるんだ。

心をほんわか包むような・・・さ。

誰がって?

コホン・・・僕がさ。

そんな僕の話をちょっとだけ聞いてくれる?

今夜はなんか話したい気分なんだ。

僕?

僕は電車のシルバーシートさ。

あのさ、シルバーシートって和製英語だって知ってた?

英語だとpriority seatって云うんだってさ。

全然違うよね~。

でも、シルバーシートのほうがわかりやすいよね~。

あ、ちょっとした豆知識ひけらかしちゃった感じ?(笑)

ごめんごめん。

でさ、昨日の昼のことなんだけどね。

僕に座ってくれたのは、白髪のおじいちゃんとおばあちゃんだったんだ。

楽しそうに映画の話とかしてて、見つめあったりしてさ。

うん、こういう老後がいいよなぁ~。

え?椅子にそんな老後は無いって?

シーッ!

黙ってたらわからないって(笑)

で、3人掛けの僕の最後の1つが空いていた時の話さ。

大きなターミナル駅からドサドサっと乗って来る人達。

まぁ、ウイークディの真昼間だって言うのに、みんなドコに行くんだろうってくらいに。

そのパワフル軍団のトップに躍り出るようなパワフルな1人が一目散に僕にドサッと座ったんだ。

そりやぁさ、僕は座られるためのシルバーシートだから、喜んで「いらっしゃ~い」ってしたいさ、

でも、四角くて重い風船のようなお尻が元気に「バフン!」って突然だぜ?

ちょっと引くでしょう、そりゃぁね~。

なんなら「ブーブークッション」(古いなぁ・・・今もあるのかな?)置いときゃ良かったって思うくらい。

あ~~もう首が痛い。

こういうの、ムチウチ症って言うんだよなぁ~きっと。

首が痛いもん・・・って椅子に首がないって?ま、その辺は臨機応変に考えるとして(笑)

百歩譲って、若いコなら「しょうがない」って思うけどさ・・・なんてね。

でも、それで終わらなかったんだ、実は。

ふっと周りを見てみたんだ。

そしたら、手すりにつかまっている具合の悪そうなおじいちゃんを発見したんだ。

ねぇねぇ、気付いてよ~ってパワフルバフンのお尻をちょっとだけ揺らしてみたけど、

しっかり寝たふり。

僕も座ってもらっているのに好かれてるのに言うのもなんだけど、

出来ればあのおじいちゃんに席を譲っておじいちゃんに座って欲しいなぁって思ったんだ。

そんなことをあれこれ思ってるうちに、一駅、二駅、三駅でおじいちゃんは降りていった。

さっきよりちょっとヨロヨロしてた気がする。

大丈夫かな?

全くっ!!って思って、もう一度パワフルバフンのお尻を揺らしてやった(笑)

あ~あ、てんで気持ちよさそうに寝たふりさ。

えり好みするわけじゃないけど、やっぱり、あのおじいちゃんに座って欲しかったなぁ。。

ちょっとだけ、ホッとして欲しかったなぁ。。

僕の出来る唯一の特技だからさ!

真夜中過ぎの夜空を見てると、いつも思うんだよね。

明日は僕に座りたい人がちゃ~んと僕に座れますように!って。