年寄りの椅子【物の気持ちシリーズ】

ここの月一の集会で物の気持ちの会話をしてて

「これも書けるね!」ってなって

家に帰ってからさっそく書いてみたら

年寄りキャラになってしまった(笑)


【年寄りの椅子】

思えば随分と働きすぎた さすがに少し休みたい
でも 今までわしは人の負担を和らげる事を目的に作られて
「椅子」と名を与えられ働いて来たわしは
人の休ませ方を知っていても自分の休ませ方を知らない
椅子であるわしは椅子であるが故に椅子が座る椅子を見つけられず
「この世に椅子が休息出来る場所はあるのだろうか?」と
一つ 深いため息をギシギシと言う音色で表現した

…疲れた身体を休める方法を今更探してもわからない…

家庭を支えるテーブルと椅子 駅のホームのベンチ
世の中にはわしと同じ椅子の仲間が沢山いるけれど彼らはどう考えているのだろうか?
比較的新しめの若い椅子やベンチにはその若さ故に見えない物もある
綺麗な椅子は考えないかもしれない事を最近のわしは年のせいか良く考える
長年の無理がたたって古びた木材が凝って時々「誰か揉んでくれないかい?」と頼みたくなる
わしももう若くない それ故に感じる事は多くなった
誰もが通る道とはいえ淋しいものだ
言い忘れていたがわしのいる場所は「無人駅を降りたすぐのところ」にある「バス停」だ
夏でも冬でも人は殆ど来ない それでも毎日同じ場所に立って 時々来る人を座らせる事がわしの役目
わしに与えられた仕事だった
それにしても椅子はいつも人より低い立ち位置から世界を見ているから太陽が眩しい
照りつける直射日光はわしの肌に当たり焦がすから
時々UV加工してある傘か何処ぞの民族衣装を布団代わりにとくだらない事を思う
でも そんな事を思ってもどうしようもない 無駄な事だともわかっとる
だからわしはもういいんじゃ 紫外線なんぞもうどうでも良いんじゃ…
ただ もしもこんな老いぼれの望みが一つ叶うなら
町にいなくなった人達にもう一度戻って来て欲しい
「もう一度 皆の顔を拝ませておくれ…」それだけで良いんじゃ…
昔は良かった 無人駅と呼ばれる前は活気があった
その頃のわしはまだ今より少し元気で多少の人数を一度に乗せてもへっちゃらだった
人のいないバス停の椅子になったわしは毎日静寂に包まれた景色を眺め
ただひたすら永い時間を過ごしそんな事を思った
わしはもう疲れてしまった さすがにもう眠りたい
「なぁ、、もう休んでもいいじゃろうか?」誰もいない町に向かって椅子が口を開く
ギシギシッ よろける足で 立ってるのがやっとの身体で 椅子は最期の最後まで一度も座れない
思い出そうと思えばいつでも瞬時に思い出せる楽しかった日々
老いぼれた椅子は休み方を知らない 座りたくても座れない椅子は四本の脚が壊れるまで座れない
その役目を終える時が初めて地面に座れる時 生まれてから朽ち果てるまで椅子はずっと座れない
だからそこの君 一つわしの頼みを聴いてくれんかね「椅子を大切にして欲しいんじゃ…」
わしは幸せじゃった だからもう良いかのう そろそろ座らせておくれ、、、

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