【短編小説】ムーンパレスに連れてって

【コメント】
これをはじめて作成し始めたのは2012年
途中まで書きかけのまま放置していて
最近ふと最後まで書き上げたいと思って書き上げました
と言っても 書こうと思えばまだ抜けてる点は多々あります
書こうと思えば書けるのでまた気が向いたらちゃんと仕上げるかもしれませんが
とりあえず大雑把に無理やりに一応の終わりを作りました
まだ謎が残ってる面もあるので本当に無理やりですが一応完成って事で載せてみます
もし何かで使ってもらえるとしたら改めて完成させます

第1章「戸惑い(静華泣 夜―しずかな よる―)」

屋根の上から雨粒がおちて その時 一雫の中に 僕達の過ちを見た気がした
セピア色に塗り固められた記憶は目覚めの時を待っている
時計の針は 電池が切れたように動かない
僕の名前は「静華泣夜―しずかなよる―」
幼い頃に交通事故で両親が亡くなったと聴かされていた僕は
母がたの親戚に引き取られ育てられた。
だけど親代わりだった僕のおばさんとおじさんも長年の無理がたたって去年亡くなってしまった。
おばさんは亡くなる直前、きっと物凄く苦しかっただろうに最期の言葉を振り絞って、
僕に「実の両親はまだ生きている…」と、僕が捨てられた子だった事を教えてくれた。
そして「ごめんね ずっとあなたの事を騙していたの 許してね」と涙ぐむと
力弱くつないでいた手は指先から少しづつ離れて行き
それはとてつもなく永い一瞬で 僕は何も言えないまま おばさんの手を
しっかりと握り返して上げる事しか出来なかった。

今更実の両親が僕を何故捨てたのか会いたいとか憎む気持ちにはならない
理由は簡単で 僕は僕を育ててくれたおばさんとおじさんが大好きだったから
僕を取り巻く環境や友人ともきっと もともとの両親と過ごしていたら出会えなかったから
むしろ僕を捨てた両親に感謝したいくらいだ
だけど僕には好きな人がいる その人に僕が恋愛感情を抱いてる気持ちは言わない 言うつもりもない
何故なら昔からずっと身近な人の死を見て来たから
僕はいつの間にか物事の始まりに「最期を見る癖」が付いて 失う事が誰よりも怖くて
人生と言う命の足元に幸せの種を自分から植える事が苦手になっていたから
僕は決して自分から幸せになる可能性を作らないようになっていた
壊れた時「やらなきゃ良かった」って後悔するから
「それならやらずに夢や希望を持ち続けた方が幸せなんじゃないか?」って
「願いが叶わなければ その間 少なからず永遠に消えない可能性がある」と内向的になって
「その方が利口(しあわせ)なんだ…」だと思い込む事で自分を守り
それは確実に逃げだったのかもしれないけれど
一生懸命自分で自分を「それでいい、それがいい」と納得させるしか、そうしなければ耐えられなかった。
僕は占い師でも予言者でもない だから先の事がわからないから
日々過ごす毎日の中で暗い夜の闇は日に日に深くなって行った…
「どんなに楽しくてどんなに幸せになっても」
「人の最後に死が存在しているかぎり結婚して永遠の約束を交わしても悲しみしか生まれない」と思うと、
涙を忘れられない静華泣夜は、やっぱり「静かな夜に泣く華」でしかなくて、
気が付けばいつも孤独に囚われる事でしか他の生き方を忘れてしまっていた…

そして静華泣夜は僕のハンドルネームだ
人目を気にして極力他人との接触を避けて来た僕が唯一周りから与えられた名前だ
きっとこの名前を付けた連中は皮肉をたっぷり込めたんだと思うけど
案外僕はこの名前が「僕にぴったりだな…」と気に入っていたし他人の思考など関係なかった。
例え本当に皮肉で付けられた名前でもそれならそれで甘んじて受け入れる覚悟はあったし
皮肉に対して「有難う」と笑い返す事で僕は僕の壊れ行く心を寸前で守っていた
それは同時に自ら孤独を選ぶ事でもあったけど
殆どの人間は自分を守ったり魅せるためにプライドを持っているから
でも僕の場合は違ったから、僕は「プライドを持たない事がプライド」で
ずっとカメレオンになりたかったから いろんな事を考えた
いや 微生物でもいい 僕は僕として存在出来る命(ぼく)になりたかった
カメレオンは状況に合わせて色を変えられるから その柔軟性を
微生物は顕微鏡でも使わないかぎり見えないところが
誰にも見えない僕の本心に思えて「似ているな…」と思って…
僕はいろんな事を拒否して生きて来たけれど 本当は一生懸命に僕の存在について叫んでいたんだ
いろんな人に触れて欲しかった 僕の本心に語り掛けて欲しかった
真剣に何度も何度も語り掛けて 弱虫な僕を「それじゃダメじゃないかっ!」と叱って欲しかったんだ。
間違う僕を夜の闇から朝の明るい光に連れ戻して欲しくて
だからカメレオンになりたかったし 微生物でもいいと思って、
きっと僕はそんな人に憧れていたのかもしれない。
でも人は人であって 雑食動物であって 僕は僕で 他の何にもなれない
気が付いた時 僕には「変わった人」の代名詞が付けられていたけれど
普通とか常識とか一般的とか言葉が嫌いだった僕は
誰にも囚われない「誰でもない僕になれた」事が嬉しかった
それに時々僕を病気扱いする人もいたけれど「病気なのは周りで僕は病気じゃない」と
「変わった人」ではなく「これが人間だ」と、本来あるべき人間で「普通だ」と。
でも周りはそんな事を無視して僕の気持ちを一方的に封鎖して自分達の都合の良いように変えようとする。
周りと少し違う世の中に馴染まない僕の心を改造しようとして
「それは僕の思う愛の形じゃない」と感じたものに対して僕は徹底的に反抗した。
そして静華泣夜の名のように悲しい夜が続くと「まぁいいか」と静かな気持ちが芽生えて
その気持ちは「まだ失われていない永遠」が夜の月の裏側にあるからこそ生まれて来る苦しみだから
その時抱いたその場合の「まぁいいか」は改造されてもいいかのいいかではなくて
「言いたい奴には言わせておけばいいか」の、強がりとも諦めとも違う気持ちだった。

どうせ最期は誰もが死ぬのだから「薬も何も使わない本来の寿命を生きて死ねればそれが本物だ」って、
僕はこう言う人間だから「好きな人」の事も僕の胸の中で眠らせておけばいいと思ったんだ。
苦しさは諦めようとしても諦められない人間の中に生まれて存在するから
僕が選んだこの道は 後悔まで行かなくても 時々辛いと思う時もあるから
是が非でも叶えたい夢がいつまでも僕を苦しめるけど
行きたい場所はいつも夜の月の裏側にあるから、
僕を待ってる「光輝くいつか」が僕の支えでもあるから戦うしかなくて
仮に僕が死んだ後僕に気付いてくれる人がいたとしても それはそれで嬉しいけど
僕は自分が大切に想う人を僕の存在のせいで苦しませたくないから自分から一人になる事を選び
極力僕は自分の情報を流さないように目を閉じて生きる事を意識するようになったんだ。
だけど時折ぶつかる疑問は「本当の愛って何だろう?本当の幸せって?」と言う事だった。
生きてる時、死んだ時、僕の存在の意味は本当にわかるのだろうか?
それは僕じゃない「後に残った人達」が見付けてくれるのだろうか?
不安になって僕はおばさんの残した言葉と今何処に存在しているのかもわからない両親の謎について考えた。
「捨てるくらいなら何故生んだ…?」と月のように悲しみが満ちて来て泣いた。
そこにどんなドラマがあって、どんな想いがあったのか…
両親についてはどうでもよかったが、それだけは気掛かりだった。

そして永遠とも思える夜が明ける
バイトに出掛ける
僕に声を掛けて来た声に振り向くと女の子がいた「青野空―あおのそら―」だった
彼女の名前は僕と違ってハンドルネームじゃない
青の空と静かな夜…昼と夜だからきっと僕達は永遠に一緒になれない
文字通り夜の闇の僕は朝の明るい光に連れ戻してくれると信じて青野空を好きになった
だけど「昼と夜の交わる線なんてあるのだろうか?」と考えた後に
「いや 待てよ 渚のように波と陸の繋ぎ目があるように」
「もしかして昼と夜が重なる場所もあるかもしれない…」と
僕は僕が好きになった青野空と一緒にいる時に他の
「黄昏瞳―たそがれひとみ―」と言う女性の事も考えて「最低だな…」と
僕は僕に対して愚かな人を蔑むように笑った。
黄昏瞳は僕の幼馴染だ しかし最近は会っていない
その時「夜くん、ねえ 夜くんってばっ!」と青野空の呼び掛ける声にふと我に返り、
「どうしたの?ぼーっとして…」と青野空が不思議そうに、だけど心配そうに、
その可愛らしい顔を僕に覗かせていた。
僕はあわてて だけど静かな夜を保つようにあくまで冷静に
「あ、うん。何でもないよ…」と答えるのがやっとだったそれは僕の悪い癖だ。
そして何でも最期から考えてしまうと周りの声が聴こえなくなるのも…

誰かが僕を信頼しても僕は誰も信頼する事が出来ない
「もっと関わらなきゃ」「人を信頼しなくちゃな」そう思っても簡単には行かない
僕の思考は十九年間の人生を得て蓄積され、構成されたまま時間は止まってる…
青野空はたぶん本心で僕を見て話し掛けてくれてるとわかっていても
僕は不意にその笑顔が途切れる瞬間を想像して
彼女の気持ちに応える事が出来ない 近付く事も叶わず口ごもって
僕は彼女を本気で想いながら好きな人をいつも傷付けてしまう。
そして「僕は生まれて来なきゃ良かったな」と僕が生きている事に後悔する。
本当は優しくしたいのに優しい態度が出来ない僕は僕が嫌いで、生きてるとどんどん自分が嫌になって行く。
魂が削られて行く罪(いたみ)が僕の胸を締め付ける…
時間は動いている 目に見えない砂時計は確実に存在している
だから人生の針を見て見ぬ振りをする人達が許せない
命の価値を考えず無駄に健康を暴力に使って愛を冒涜する人達が許せない
大切な人といる奇跡に気付かず すぐ近くにある幸せに気付かない
そんな人達と同じ目線で僕はまっすぐ世界を見れない。
平凡な道を歩んで来た人達にもしも僕の経験と感覚を自分の意思で自由に憑依させる事が出来たら
僕の伝えたい一部分を 伝えたい心と感覚 その時の感情をリンクさせて
「本当にわかって欲しい気持ちが全部 すべての人と共有出来たら」なんて考えてしまう。
青野空の事は本当に好きだ だけど だから 僕は
僕自身に矛盾がある事に気付かされると痛みから逃れられない。
僕はまだ「これからの自分」について明確な答えを出せないでいるから苦しい。
十九歳だし 何より大人と言う生き物を軽蔑しているから
僕も同じ存在になる事を嫌い 青野空と出会うまで
二十歳になる前、十九歳の終わる一日前に死ぬつもりだった。
そして僕は僕を捨てた両親さえ恨んだ事がなかったのに
僕を死なせてくれなかった大好きなはずの青野空を憎んで行った
僕には僕の理論があって その理論の元に生きて来たのに彼女はその理論を全部壊したんだ。
僕は矛盾が嫌いだから僕も嫌いになって 彼女を愛しみながら憎んで
僕は夜 昼の青野空とは永遠に雑じり合えないから
そんな彼女に心からの愛を覚えた時
僕は同時に憎しみの狭間で その時はじめて揺れ動く「戸惑い」を知った。

第2章「青野空の夢見る小鳥」

青野空の物語を話そう 青野空は十六歳のまだ夢見る小鳥だ
彼女は明るくて 人懐っこくて まだ飛べない鳥だけど猫みたいな女の子だった
そして時折魅せる儚げな表情が印象的で
その表情をする時の彼女はまるで透明なガラス細工みたいで
「儚い」と言う言葉は彼女のためにあるとさえ思えた。
壊れそうなのに強烈な存在感、
彼女は青の空の名の通り青色の瞳を持っていた。
彼女のそれは生まれ付きらしくて
幼い頃はそれが原因でいじめられたり、からかわれていた事もあるらしい。
青い瞳は彼女のコンプレックスだった
でも僕はそんな青野空の青い瞳が好きで
僕と彼女はまだ知り合って間もなかったから
お互いの事など何も知らなかったけれど
だからこそはじめて会ったその日から「知りたい」と気になっていた。

二人は同じ星(ばしょ)で別々の時間(とき)を過ごしていた
彼女はどうして僕と同じバイト先でバイトをしているのだろう
僕は彼女の事が気になりながら 流れて行く時間(とき)に身を委ねるしか出来なかった
彼女はまだ熟す前の甘い果物みたいで まだ空も飛べない青い小鳥だから
繊細な声で かぼそく 今にも消え入りそうな声が特徴的だった
身長はおそらく百四十九センチくらい
体重はおおよその見当は付くが あえて書かないでおく
唇が小さい 苺が好きらしい
そして時々「鳥になりたい」と言うのが口癖だった。
彼女はまだ空を夢見る青い小鳥だった。
青野空は「死の向こう側を見てみたいの」と、そのために鳥になりたいと語った。
いつも笑顔を絶え間なく 誰にでも優しく明るく振舞う彼女の心の裏側には
誰も知らない彼女の闇が隠されているのだろう…
「ムーンパレス、月―ユエ―のお城に連れてって…」と、
「私が歩いてる場所を宙(そら)から見てみたいのよ」と彼女は言った。
僕は夜だ。だから月―ユエ―の事は良く知ってはいるけれど あいつとはあまり仲が良くない。
だから僕は一瞬ためらったけど 彼女の申し出を断れる訳もなかった
「やっぱり彼女が好きだ 放っておけない」と星のように瞬く汚れのない気持ちが僕を突き動かした
彼女はそんな僕の気持ちを知ってか知らずかとても無邪気に笑っていた
そしてその途中で僕は黄昏瞳と出会う事になる
その出会いは出来れば避けたい望ましくない出会いだった
と言うのも青野空と黄昏瞳は姉妹で仲が悪かった
当然青野空に心奪われている僕に対して黄昏瞳は良い気持ちを持っていない
だけどそれは裏返せば好意だ 嫉妬とも言える感情で
僕に恋愛感情があるがゆえに抱いた黄昏の真っ赤な炎で
青野空と黄昏瞳の二人の女の子の間で僕が静かな夜のように何も出来ないでいると
「優柔不断な態度がむかつくのよ」と黄昏瞳が口を開く。
それに同調するように「優し過ぎるのも人を傷付けるんだよ 夜くん…」と青野空も呟いた。
二人は仲が悪かったけれどいつみ「その点だけは一致していた。
僕は夜に浮かぶ星のようにいつも笑顔で誤魔化していたが
二人の強い視線に「逃げられないな」と深いため息を一度付くと
その間もずっと黄昏瞳が僕に赤い冷たい視線を全く苛立ちを隠す素振りもなく見せていた。
青空の青や夜空の黒とは逆の 絶えず荒い黄昏の赤い瞳は彼女の存在そのもので
ムーンパレスはまだ遠い だけど改めて動き出した船はもう止められない
僕達はこれから起ころうとしている事に立ち向かうしかなかった。

第3章「黄昏瞳はご立腹」

黄昏瞳の機嫌が悪いのは僕と青野空が仲良くしているからだ
もしかしたら昼と夜の間の黄昏はいつも僕達の知らない寂しさを抱えていたのかもしれない
だけど黄昏瞳は絶対に自分から寂しさを伝えるような女性じゃないし
光と闇の間に存在する黄昏瞳には属性がない
昼でも夜でもない彼女には僕達の知らない不思議な世界と価値観があった
青野空は純粋で明るい中で儚さを漂わす守りたくなる少女で
それに対して黄昏瞳は何でも自分の思った事をはっきり言ってしまう少し損をするタイプだ
そんな女性を僕は嫌いではないけれど「少し苦手だな…」と感じながら、でも「知りたい」と思っていた。
そして黄昏瞳は僕を呼び捨てで呼ぶ 自分から話しをしない彼女が驚いた事にその時は話し掛けて来た
「ねぇ 夜…夜は私達姉妹の事をどれだけ知ってるの?」と、
「不思議に思わないの?青野空と黄昏瞳、どうして苗字が違うのか…」と聴いて来ると、
「そう言えば考えた事もなかったな」と僕は改めて気付いて、二人の苗字が違う事が気になった。
同時に何故二人が姉妹なのか気になると「私達、本当の姉妹じゃないからなのよ」と黄昏瞳が呟いた。
「私達も本当の両親に育てられたんじゃないの」
「二人は別々の両親に別々の場所で育てられてね、今その両親も行方不明なの」
「つまり、あなたと少し似ているわね…事情は違うみたいだけれど」と言った。
そして僕に聴こえるか聴こえないかと言うくらいの小さな声で
「だから私もあなたに魅かれたのかもね」と言った。
それは一瞬空耳かとも思ったけれど確かに黄昏瞳の声だった。
夜に近い でも夜じゃない赤い孤独な瞳は青野空が持ってる太陽とは違っていて
本当は誰よりも一番寂しくて 温もりを求めているのかもしれない…
それから僕と黄昏瞳は暫く話していたけれど
その間 黄昏瞳の横で青野空はいつの間にか無邪気に眠っていた。

黄昏瞳はいつも怒っている 青野空に嫉妬しながら でも愛おしみ
それはきっと複雑な感情で
荒ぶる気持ちの果てに青い空から赤い空に変化する時の
いや 赤い空から青い空に向かう時の寂しさのような蒼い炎だった
僕達三人は似ている 昼と夕と夜でつながっている
僕達の両親は何処にいるか知らないけれどムーンパレスに行けばわかるかもしれない
だいたいの場所はわかってる ムーンパレスは月の裏側にある
そして 月の裏側とはそれは心の奥の事だ
僕達が今向かってる場所は深層心理の果ての果て
沢山の心と向き合って怒りと孤独と悲しみの果てに僕達が成長すれば幸せはきっとある
ムーンパレスはそこにあるんだ…

「むにゅむにゅ…う~ん もう食べられないよぉ」と青野空が不意に寝ぼけて言う。
僕達は顔を見合わせて笑う それは僕達が知らず作っていた緊張感を解いてくれた
「そろそろ起きたらどうなの?そら」と黄昏瞳が優しく青野空の肩を両手で揺らして起こそうとする。
「ん~ まだ眠たいよ お姉ちゃん…」と目を閉じたまま青野空が言う。
僕は「黄昏瞳の事を誤解してたかもしれないな」と反省する
両親は違うかもしれないけれど確かに彼女は青野空の姉妹で姉だ
何故「出来れば避けたい望ましくない出会いだった」なんて思っていたのか
僕は二人が仲が悪い姉妹だと思い込んでいたけれど
ちゃんと中身を知ってみればそんな事はなかった…
それは不器用なまっすぐ過ぎる愛ゆえに見えていた黒に近い純粋な赤い瞳だったんだ。
不器用なところは僕に近い 黒に近い赤だから僕に近いのか
僕はいつも自分の思い込みで
良く知らない事を理解したつもりになって話しを進め
間違ってる事が多いから「誤解を受ける」
そこが黄昏瞳と静華泣夜が「似てる部分だな」と思った。

青野空と黄昏瞳は性格は正反対だけれども二人とも凄く良い子で
それは今回黄昏瞳とこんなふうに話せたからわかった事で「話せて良かった」と心から思った。
だけどこんなふうに気付かない何処かで
良かれと思って沢山の人達に優しさを向けたけど過ちを犯してるかもしれない
もっと話しを聴いて夜に見える一瞬の流れ星のように終わらないように
もっと人の目を見て話しを聴かなきゃダメだと思った。
「ムーンパレスに連れてって」それは偶然僕が青野空に頼まれた事だけど
僕は僕の好きなものに興味を示すと周りの他のものを自分思考に捉えて
大丈夫じゃない事も大丈夫と決め付けて変に動いたり考えすぎて 大切なものを失う恐怖に打ち勝てなくて 
わかってる事もわからない振りをしたり逃げ出して その結果 黄昏瞳を傷付けて悲しませて
他人の事を考えて行動したつもりのが誰よりも自分の事しか見えてない状態になって
静かな夜はその通り闇になっていたかもしれない
だから黄昏瞳はきっと誰よりもすべてが見えていて
いろんな事に気付かない不甲斐ない僕に怒ってたのかもしれない
そして僕の事を想ってくれているのに 青野空の事ばかり見ていた僕が憎らしくて
「青野空にも優しく出来なかった」としたら
僕のせいで僕は二人に迷惑を掛けて 傷付けていた事になる

第4章「月のお城(ムーンパレス)に連れてって」

ムーンパレスに二人を連れて行けるほど僕はまだ大した人間じゃない
いつになれば僕は彼女達をムーンパレス(幸福)に連れて行けるのか…
その時 青野空が起きた「にゃ~」とないて突然「いっちご!いっちご!」と言った
これは青野空が両親がいなくて寂しい時に甘えてするいつものパターンだと黄昏瞳が言う
「もう十六歳なのに まったくいつまでも子供ね 空は…」と呆れたように
でも優しい母のような眼差しでかばうと青野空は嬉しそうに苺を口いっぱいにほうばる
嬉しそうな表情を見ているとこっちの方が幸せになる
僕はやっぱり青野空が好きだ 今では黄昏瞳とも出会えてよかったと思っている
十九歳 大人だけれど大人じゃない 未成熟の僕はいろいろな人達や困難と出会いながら成長して行く
「優しすぎるのも人を傷付けるんだよ 夜くん…」と青野空に言われた言葉も忘れてないから
僕は優柔不断ともさよならして月の裏側にある本当の心 自分と向き合って
今度こそ本当の意味で誰も悲しませない もちろん自分の事も悲しませない未来を作りに行こうって
青野空と黄昏瞳と出逢えてそう決心したんだ。

月―ユエ―とはまだどう付き合って行けばいいか考え中だ
あいつと僕はあまり仲が良くないけれどムーンパレスに行くにはあいつをどうにか説得しなければならない
月と夜は一緒の世界にいるのに月の裏側は遠い 自分で自分を説得する事が一番難しいんだ
でも「出来ない」とは思わない 例え仮に本当に一生出来ない事でも出来ないとは思わない
必ず小さくて見えなくても何処かに糸口はある
信じて生きていれば思ってもみない場所に奇跡があるかもしれないんだ…
僕達の両親の事は気になるけれど
夜の星のようにこっちからも僕達が輝かなきゃ向こうからも僕達を探せない
だから今は両親の事よりも僕達が成長する事を選んでいればいつかきっと、きっと…
宇宙は広い 人生のように果てしないから でも美しいままきっとまだ見ぬ世界には希望が満ち溢れている
青野空と黄昏瞳ときっと僕達三人ならすべての世界を見られる
すべての昼と夜を超えて目まぐるしく変わる時間(とき)の中で
自分を見つめ自分と向かい合えば僕達は成長の果てにムーンパレスに辿り着ける
そしてムーンパレスに着いた時 月野唯笑と出会う
月野唯笑は月に唯一生息するムーンパレスの住人だ
とは言え 月野唯笑は誰かであって誰でもない
いつも誰かのそばにいるけれど誰の近くにもいない透明な月のウサギで人間じゃない
もしかしたらウサギでもないかもしれない
その存在は不確かで彼女が生命なのかどうかも正直わからない
僕が知るかぎり彼女は彼女で彼ではない
その性格は温厚で誰に対しても優しいが苦手なものに対しては口を開かない
そして彼女は月―ユエ―そのものでもなく彼女もまた月の中で道に迷っている…
僕は彼女の存在を話しに聴いた事があるくらいで
だから彼女について語れる事はあまりないのだけれど、
ムーンパレスを目指す過程で知っておかなければ行けない存在が唯一彼女なんだ…

彼女はとても寂しがり屋で ムーンパレスの管理人と言われている
ムーンパレスに行くには月に入らなければ行けない
そしてその城の管理人でもある月野唯笑に会う必要がある
だけど沢山傷付いている彼女は簡単に人を信じない なかなか人前に心を現さない
彼女の心を開かなければムーンパレスの扉は開かない 城には入れない
彼女の攻略こそがムーンパレスに辿り着くための本当の鍵なのだ
その事を知らず月野唯笑と接してしまったから僕は失敗した
月野唯笑は繊細だ 傷付けたら行けない 決して裏切ったりしたら行けない
夜の僕は無力で 星屑のように小さくて 何も出来なかった
やっぱり僕は輝けない 月の引き立て役くらいにしかなれない
それでもいい 僕が誰かの踏み台になって誰かが輝けるのなら…永遠の夜が僕の役割りならそれで…
僕は太陽に憧れていたけれど 誰にも見向かれない
求められる存在じゃなかったのだから ムーンパレスの鍵はまだ開かない
だけどいつか月野唯笑の心を開けられればムーンパレスの扉は開く
そしたらきっと「此処ではない何処か」今の僕達には見えない違う世界に
青野空を 彼女達を笑顔に出来る幸福の場所へ連れて行く事が出来るかもしれない
少しづつ一歩づつ一歩づつ進めたらいいんだ 今はそれで、それ以上を求めたら行けない
世界はいつでもすべてとつながっている 昼も夕も夜も そして太陽も月も
僕は青野空と黄昏瞳の力を借りて 自分だけの力じゃ先へ歩けないから進んで行く
喜びも悲しみも全部受け入れて 不完全な僕も僕の一部なんだって光と闇と結ばれて行く【終】

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