【寝て見た夢、朗読】水に浮かんだ骨の物語

僕等はkissを与えられれば目覚めると信じながら死んで行った
空虚の海に星の絵が光る
水上ではきっとぷかぷかと安定しない彷徨う月が でも美しく輝き
四方に陸の見えないところで物語は語られる
僕が見たかった世界と「ここは違う」と
不意に何処からともなく僕の心の中に僕の知らない声が聴こえた気がした
そして夢見る事を忘れられない僕は
「ここじゃない何処かへ行こう」と囁く声に言われるがまま
そのついでに「死んでみよう・・・」と思って
僕は自らの意思で死んでみたんだ。
ついでに、と言ったのは別に「強制されたわけじゃない」と思ったからで
「ここじゃない何処か・・・」と言われただけで 只それだけで
「でも何処へ?」と思った時 僕は昔から面倒臭い事が嫌いだったから
すぐに浮かんだ事が 偶然「死」と言うそれだった、それだけの話しだ。

どうせ最後は死ぬんだ 遅かれ早かれ面倒な事は先にすませておいた方がいい
だから「ついで」今やらなくてもいい事だけど いつかは来る日に対して
僕は面倒臭い事が嫌いだから「一石二鳥」「一石三鳥」
それが出来るチャンスさえあれば僕は僕を殺す事なんてわけないと思った。
そして今がきっと「そう言う時期」なんだと思い込んで僕は死んだんだ。

ここは深い海の底で 光が届かない場所、
光を一生知らないところで生まれ 光を一生知らないまま死んで行く
まるで深海魚みたいに僕は暮らす事を決心して ここへ来たんだと思う
とても静かだ・・・でもこれでいいのか 時折僕は考える。
天上ではまだきっと僕が置いて来た星の絵が光ってて
水上ではきっとぷかぷかと安定しない彷徨う月が でも美しく輝いている
だけど僕の魂は深い海の底で 物語はそれでもまだ僕に光を見せようとする

「一度死んだ人間はもう二度と生き返らない 当然じゃないか」
不意に水上に小さな白い破片が浮かんで来て
月がそれを照らした瞬間 小さな白い破片は昔の僕の人体をかたどっていた骨だとわかる。
「こんな空虚な海に浮かんでるなんてやっぱり僕は孤独だな・・・」と、その時深い海の底で眠る僕は呟く。
「誰もこんなところに僕がいるなんて思わないさ」僕は海の深い暗闇の底で 呆れたように苦笑する。
あれから僕はまだ誰のkissも受けられないまま いくつもの夜を数えている
kissを与えられれば目覚めると信じながら僕は死んで行った
でも僕にkissをくれる人なんて一人もいなかった
結局僕は生き返れない。いつ明けるかもわからない星空が永い時間を通り越し、
僕は馬鹿だから相変わらず光無き闇の底で光の夢を見ていた。
でも気付いたんだ「生きてる時に僕は何が欲しかったのか」って、それは「愛」だった。
そう 僕は生きてる時 誰にも愛された事がない人間だったんだ。
だからこの海を漂おうと身を投げたのかもしれない
深い海の底で一生光と出逢わなければ 光を知らなければ 光の夢なんて見ない
そうすれば ここに来れば もしかしたら僕は救われるかもしれないって・・・
だけどやっぱり駄目だった 闇しかない海の底でも僕はやっぱり昔と同じように光の夢を見てしまったんだ。
四方に陸は見えない 船の通る気配もない 水上に揺れる月が只僕の横で静かに寄り添っていて
僕は二度と僕が求めた人の愛情に触れられなくなった現実を思い知らされ
取り返しのつかない過ちを犯した事に、はじめてその時胸が痛んだ。
「ここじゃない何処かへ・・・」僕が見た夢は 僕が死ぬ時聴こえた声は、今はもう聴こえなくなっていた。

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