【物の気持ちシリーズ】公園でね

子供も大人もここに来ればみんな公平になれる、
私は公園。私を産んでくれたのは父だった。
父は私に穏やかな日差しが降りる場所、時が経っても 優しい気持ちを私に忘れないで欲しい…
という想いを持って 私にこの名前を付けたという。
いつまでも優しい風のように暖かな眼差しで 誰かを幸せにするように 幸せにされるように

父は欲深い人でいつも頭の中は私の事など放っておいて
お金儲けの事ばかりを考えている人だった。
私は公園、「お前にはいつも遊んでくれる人達が居るだろう?私は忙しいんだ!!」
と、言って私が父に愛をせがむと大抵の時は跳ね返されて
初めはそんな言葉も私のわがままだと解っていたけど
「お父さんが私を作ったのはお金のためだったの?」
気が付いた時にはもう私は父に向かって この言葉を出していた。

(言葉を出す)と言っても、私は公園だから話す事はできない。
木々を揺らしたり 風を泣かせたり
砂場の砂を辺り一面に まるで文字を描くように舞かせたり
私は父に愛を示そうとした。 無理矢理な愛でもよかった。
私は父に振り向いてほしかった。
    
私には母がいない。 居るのは私を建設したお金目当ての父だけだった。
それでも私はよかった。私には元々母はいない。
「生まれて来る初めから私は母の愛を知らないんだもの」
だから私は母のいない事に不満もないし、
寂しさも感じる事はなかった。父さえ居れば私はもっと大きくなれる。綺麗になれる。

たまに公園を汚したりする人も居るけど、そういう人達の行動は父が許しておく筈がない。
父は私に何も愛をくれない代わりに最高の空と太陽と
大人達と子供達の歌うパレードを見せてくれる。
毎日 毎日 同じ場所同じ時間に 遊んでくれる人達 私には父が居る。
父が居たから私はいつまでもここで 日差しに「おはよう」って言える。
私は公園。それはここに生きる全ての人達に 夢と安らぎと小さな小さな幸せを運ぶ土地。
私はいつか死んでしまう。きっと こんなに沢山の人達に 忘れられて誰も来なくなる。
やがて時代が過ぎた時 いつまでも私だけは子供のままなのに子供達は大人になる。
私は一人 夜に取り残される。
父は死んでしまった。私を残して誰もが私から去って行く。
季節毎に変わり飛び来る鳥達、花の色、香りや暖かな体温や冬の天気。
幾つもの時を越えて
「もしかしたら、私こんな小さな公園じゃなくて遊園地にでもなれるのかしら?・・・」
とまで思える位 父の欲深さは溢れており
それは私にとって 観覧車が私を乗せて上るかのような優しくて
とても とても大きな夢だった。
父は私に愛を持っていなかった訳じゃなく「忙しい、忙しい」と言っていたのは
いつでも父以外の本物の愛情を知らないで育った私に 母を与えようと
私を産んだ後に もう一つの小さな公園を 作ろうとしていたからだった。
(私より後に作った公園なんて妹にしかならないのに)
その事を知った 丁度1週間後、私に愛を持って不器用にそれを伝えられなかった父は死んだ。
そんな知らせを 私の上を走り回る子供達の声から聴いた。
その時から一人私は今も生きている。 私は公園、小さな、小さな公園…
名前も持たない孤独な公園。
今はダンボールに包まれた可哀想な捨て猫がたった1匹 その子だけが私の友達です。

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